05. バラエティに富んだ上方のすし【お寿司のルーツ】

柿の葉寿司のこと

すしのルーツをたどってきましたが、最後に上方で愛されるすしをいくつかご紹介します。

◆華やかな箱ずし

箱ずしは各地にありますが、やはり上方で食べられているものが有名です。

鯖、鯛、エビ、アナゴ、加えて京都では、ハモを使い、箱に詰めて、押しずしにしました。棒ずしや、魚を丸ごと使う姿ずしに対して、魚を箱にあわせて整形します。箱に入れて押すということから、魚だけではなく、おぼろや玉子焼き、椎茸などの煮野菜を組み合わせるなど、多彩な具材をうまく組み合わせるすしと言っても良いでしょう。

箱ずしは元々、箱で漬けて発酵させたもの。それが進化し、サイズを小さくしたり、押したすしがきれいに取り出せるように底板が抜けるようにしたりと、箱が改良され、今の形に近づきました。上方では、重石のかわりに両手で押せるよう、押し型を使うのが、箱ずしの基本といいます。ネタに比べご飯の量が多いので、すし飯で各店の工夫が出るのも特徴です。

ネタの新鮮さが決め手のにぎりずしに対し、箱ずしは押すという過程を経ているので、時間がたっても風味が変わりません。持ち帰りずしとしても人気があり、何種類もの箱ずしを食べやすい大きさに切って盛り合わせると、とても華やかです。

◆温めておいしい「蒸しずし」

上方で寒い時期に喜ばれたのが、あつあつの「蒸しずし(ぬくずし)」。
ちらしずしを温めたもので、幕末に京か大坂で考案されたようです。店先に出された蒸篭(せいろ)から湯気が立ち上る風景は、かつての上方の冬の風物詩でした。

元々は、ちらしずしが入った大きな箱をそのまま蒸篭にかけて、各々の皿に取り分けていたそうです。それが、芝居見物の昼食によく食べられ、出前が多くなるにつれ、初めから茶碗に盛るような形に変化したと言われています。蒸した湯気が通るように底に穴の開いた専用の容器もあったそうです。大勢の客に振る舞うので、こちらのほうが早く提供できたのでしょう。

▲▲ゐざさ 東大寺門前 夢風ひろば店のお食事処で提供している蒸し寿司

使うネタは、熱を通しても色が変わらない椎茸、高野豆腐、焼きアナゴ、おぼろなど。蒸しあがってから錦糸卵を散らすと、彩り鮮やか。

商業で栄え豪商も多く、全国から食材が集まった大坂には、味を競う料理屋が早くからありました。上方で広まったすしは、新鮮なネタで勝負する屋台から始まった江戸と異なり、すし飯と具の調和を重視したもので、料理屋で提供されるすしとも言えます。

今でも関西の料亭では、食事のシメに小さな茶碗によそった蒸しずしを出してくれるところが残っています。

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